適切な炭素を含んだ高性能な鉄を たたら製鉄と折り返し鍛造でつくるところまでじゃったのう. 今回は, それを刀に加工するところじゃ.
刀を持ったことのあるひとがどれくらいいるかわからんが, あれはけっこう重たいです. まあ, オッサンが両手で握りしめて振り回すもんだから, 重たいのは当然だな. どれくらい重たいかというと, アレに刃が全くついてなかったとして, つまり, 単なる棒だったとしても, 殴られたら首の骨くらい折れそうな 重さだ.
うまくスパリと斬れれば衝撃は少ないかもしれないが, まあ, 相手はじっとしてるわけじゃないし, 骨もあればヨロイもある. そんな重たい棒だと, 棒にかかる衝撃もすさまじいものが あろう. しかも, 振り回すのは修行をかさねた馬鹿力の武芸者だからなあ. ヘボな刀では, 斬りつけた衝撃で反りが伸びてしまい, 二度と鞘に収まらなくなってしまうので ある. 全く爆笑ものだが, 本当のことだ.
刀が焼きの入った鉄だけでできてたら, いっぱつでポッキーンである. そんな衝撃をうけたら, 熱処理された鉄なんてイチコロだ. つまり, 最悪折れることのないように, 鋼をバックアップする鉄の芯が ついている構造は最低限の装備ということなのだ. 衝撃を鉄の芯が吸収するというわけで、 吸収しきれないときは, 曲がって反りが伸びちゃうわけだ、炭素含有量のコントロールは, 重要になってくる.。
歯の構造も同じことだ、メタルコアーで支台を作れば硬すぎて折れるか、脱離してくる。天然の歯の内部構造は神経組織としてある水水しい空洞である。だから折れない理想的な構造だ。切れ味が大切なのは刃同様歯にも言える。強い力で噛めば噛む程、衝撃は強くなる。よく「噛み締め」してしまうんですけど、と質問を受ける。歯を治せば治るんです、だってカミシメしてしまう構造なんです。歯の形に問題があるんですから。だれですかマントラを唱えるように説明されているのは、だって寝ているときなんですから、問題の時間は夜なんです。
キルビルがちょっと違うと思うのは、日本刀の刃に刃文がないのです。和鋼を用いると、焼き入れの際に焼きの入った所と入らない所の境界線がはっきりと出て、その境界部に刃文が奇麗にできるのです。ちょうどシカに本物の歯ができないようにね。これではリアリティが無さ過ぎます。西洋の学問を持ってきても日本人に馴染まないことを教えてくれるかのようです。名刀をつくる職人は、科学的EBMを持ってこれを作ったかな?そうではないはずです。科学的EBM守ったら普通の刀は誰でもできます、しかし見事な名刀はけっして作ることはできません。同様に歯を製作するワックスで形をつくり最後に金属を焼き入れして補綴物の完成です。職人技はまったく同じ伝承の世界なのです。賢いあなたならそろそろわかってきたかと思います、歯科の高度な技術とは、実は究極の「アナログ」の世界における巧みな職人技術なのです。その後の調整以外は、単に歯科医師は橋渡し役に過ぎません。
切れ味には理由はありません、頭で考えてもよくわかりません、本当に切ってみればよくわかります。
歯も本物を入れてみないと本当にわかりません。そして入れなければいつまでもそのままです。
キル・ビルがおもしろくないのは、シカの治療同様にリアリティに乏しいのです。