あまりに長い顔は、シカスプリントで改造された長い歯の終焉の姿です。
むずかしい歯科用語で「安静位空隙」という言葉があります。これは、高くしても低くしても必ず噛まない間隙が必ずできるのです。
いままで誰が見てもすり減って「低い入れ歯」を入れている老人のかたがいます。すり減って低い歯であれば、元の歯の形にもどすことはよいでしょう。歯が低いのですから。しかし、それ以上の上に持ち上げたらどうでしょうか。結論としてそれでも、身体は高さに適応しようとします。納得できない無理な力技で、力学的にも当然考慮されていません。つまり身体が装置どおりに誤って上部へ偏位していきます。
ずれて不安定なほど、上げると安定したかのようにシカは錯覚します。
ここまでくれば、さずがにかみ合わせがあわないから、入れ歯の裏側に隙間あくのはよくわかると思います。義歯のズレが歯茎をやせさせるのです。するとシカは、よく裏側のやせた歯茎の隙間をプラスチックで埋めようとするのです。すると当然噛む高さ自体が変わってしまいます。隙間があり、ふらふらしていて物がはさまってしまうような貧弱にみえる義歯をはめてた方が、シカで内面を治してフィットするようにぴったりにすると必ずこう言われるはずです。
「前のほうがよかった」とこれは正直な意見でもっともな話です。高さを変えたのに、歯の入出する肝心な角度を変えていないからなのです。
終わり無き改造は、シカのスプリントで始まります。長い間培ってきた身体と決別するからです。自己改造はそのまま存在感のない自己否定の始まりなのです。科学はまだ人をつくるだけの熟成されていません。顎位が不安定な人ほど、どんどん上げられていきます。そしてその都度安静位空隙ができあがっていきます。1本の歯だけのスプリントは、口腔内を1本だけ当てるように改造されているのです。
入れた通りに改造された結果、シカの通りなのです。シカのスプリントで顔を長くするから、今これを読んでいるわけです。日本人は、こんなに顔が長くありません。